マッサージ療養費不支給問題対策検討会開催

マッサージ療養費不支給問題対策検討会開催

                                保険部長 奈須守洋

2月27日、中野産業振興会館において、保険部主催のマッサージ療費不支給問題対策検討会が開催されました。

司会進行は奈須守洋が行い、不支給再審査会の報告は、再差審査請求代理として患者さんとともに再審査会に出席した清水一雄代表理事にお願いしました。会員13名が参加、顧問弁護士の宮原哲朗弁護士もご出席いただきました。

 検討会の資料として、①再審査請求の審査を行った「社会保険審査会の裁決書」。②患者、施術者が要求した「再審査請求の趣旨及び理由」。③再審査会に提出された「保険者意見陳述書」。④治療を行った施術者が測定した「関節可動域測定表」が資料として配布されました。

1 再審査会について清水一雄代表の報告

● 再審査会は公開ですが、コロナ感染のため傍聴者は2名に制限されましたので、那須さん奈須、橋本さんに傍聴してもらいました。

● 審査会の中で2名の審査委員より、支給されるべきだという再審査請求の訴えを肯定する発言もあり、あるいはと期待を持たされたが、社会保険審査会の裁決は不支給を認める内容でした。

● 患者は肩関節や腰関節関に拘縮があり、凝りや痛みの改善のため整形外科医の同意書提出を受けて、

あん摩マッサージ指圧治療を行ってきました。

東京薬業健保は、治療をはじめて1年間は療養費の支給を認めてきたのですが、1年をすぎると「筋麻痺、関節拘縮の症状があるか」の医師への調査を行い「関節拘縮は無いという回答を得た」として不支給処分を行ってきました。

  • 薬業健保の調査 保険者が関節拘縮は無いという回答は、電話で確認したというのです。

関節拘縮がおきているかどうか、薬業健保が行った文書による医師への問い合わせに対し、医師の回答は「変形性関節症による両股、両肩の可動制限はみとめるかもしれません」というものであり、関節拘縮を認めています。保険者が関節拘縮は無いという回答は、電話で確認したというのです。

  • 患者の治療に当たる施術者の見解をなんの理由も示さずすべて無視する

各部位の筋萎縮、関節拘縮について,医師が詳細にわたって確認するわけではなく,施術において患者の状態を確認するのは施術者です。

「変形徒手矯正術を行った理由をお聞かせください」という保険者の文書による問い合わせに対し、施術者より「四肢関節拘縮、脊椎椎間関節の拘縮が腰痛や頸肩の凝り、疼痛の原因になっており、改善のためには変形徒手矯正術は不可欠」と治療を行っている見解を文書で回答しています。

  また、令和元年6月14日に測定した、患者の関節可動域測定表を再審査会へ提出し、股関節、肩関節に可動域の制限が著しく関節拘縮があることを明らかにしています。

  以上のような患者の治療に当たる中で得た施術者の情報、見解をすべて、理由を示すことなく無視しています。

  • 保険者の見解を繰り返すだけの審査会の結論

再審査会が不支給処分を相当とする理由は2点です。

第1)保険者が電話にて、電話担当者を通じて、「関節拘縮は無い」との医師の回答を得た。

第2)あん摩マッサージ加療の治療効果についての保険者の問い合わせに対する医師の回答が、

「不明です。本人曰く施術により体調の維持を図る目的とのことでした。」

再審査会は、保険者の医師に対する二つの問い合わせに対する医師の回答を勘案すると、

患者の症状は関節拘縮に至っていないと見るのが相当であり不支給である、との結論です。

あん摩マッサージ加療の治療効果をなぜ患者に聞かないのでしょう。なぜ施術者が提出している情報を無視するのでしょう。保険者の見解を繰り返すだけの審査会の結論となっています。

  • 最善の医療を受ける権利、患者の医療を選ぶ権利が無視されている

再審査会の裁決では、医師の同意書の提出を受け、患者の治療に当たる施術者の見解をなんの理由も示さず無視しています。

また、治療により疼痛の改善、歩行力改善がみられ、治療の継続を求める患者の意向も無視する審査となっています。

 健康保険法87条を根拠にした、厚労省通知による療養費の支給は、憲法が保障する、国民が健康に生きるために最善の医療を受ける権利の尊重、患者の医療選ぶ権利の尊重が無視されています。

  • 今後の対応

地方裁判所への提訴、患者さんの居住地から神奈川県となる。患者さん自身が知り合いの弁護士と

相談する。また、議員だった知り合いとも相談するとの意向です。

  我々としても裁判所へ提訴する。議員に提起し対応を検討する。その他の対応を検討し、患者さんとの話し合いが必要である。

2 検討会で提起された問題点

  • 宮原弁護士よりの問題提起

裁判所への提訴というが、法的に見て勝つことは難しい問題である。勝つことは少ない行政を

相手にする裁判であり、東京など行政の意向を大事にする裁判官が集められている。

同意書のもとになる医師のカルテに何が書かれているか、カルテに関節拘縮が明記されているかが重要であり、医師のカルテを取り寄せてから提訴は考えるべきだ。裁判で負ければ判例として残されていくことも考えなければならない。

  • 問題提起に対する意見

 重要な問題提起と思いますが、裁判に勝てるかどうかという事だけから、裁判を考えるのは疑問に思います。

医療行政における人権の軽視、「あはきの蔑視」の問題点を追及できるのが裁判の場です。

健康保険法87条を根拠にした厚労省通知による、療養費支給からの「あはき」の排除を止め、国民が必要な場合は、自らの意志で選べる療養費の支給へ、改善を求めることができるのが裁判の場ではないかと思います。

「あはき」の不支給は増加の一方であり、「あはき」の健康保険制度からの排除の改善を裁判で、また、議会で問題にしていかなければならないと思います。

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