鍼灸マッサージ師会の歴史

厚生省通知保険発150号の内容

裁判は1996年12月の第20回口頭弁論にて弁論終結し、判決は1997年3月13日と決定していましたが、裁判所の都合による担当裁判官の交代があり、判決が延期されるなどの経過があり、再度、判決は1998年1月29日と決定されていました。

ところが、1997年12月1日付けにて厚生省通知保険発150号がだされましたが、この通知により岸イヨさん鍼灸裁判の目的は達せられたとして、1998年1月の判決の日の直前に裁判の取り下げが行われました。裁判を支えてきた東京都保険鍼灸マッサージ師会や全国保鍼連役員に知らされず行われた裁判の取り下げの経過は不明瞭であり、全国保鍼連の運動に汚点を残しました。

裁判を取り下げる理由となった厚生省通知保険発150号とは、鍼灸治療療養費の支給に関する通知で、以下のような内容です。

「通知でいう『医師による適当な治療手段のないもの』とは、保険医療機関における療養の給付を受けても所期の効果の得られなかったもの又は、今まで受けた治療の経過からみて治療効果のあらわれていないと判断された場合等をいうものであること。

なお、通知に示された対象疾患について保険医より同意書の交付を受けた場合は、本用件を満たしているものとして療養費支給対象として差し支えないこと」。

この保険発150号は、神経痛やリュウマチなど療養費支給対象疾患として同意書が発行された場合に、「医師による適当な治療手段のないもの」「医療機関における療養の給付を受けても所期の効果の得られなかったもの」という療養費支給要件を満たしているものとして療養費を支給して差し支えないという通知です。

あくまでも医師の治療手段の無い場合に、例外的処置として鍼灸療養費を支給するという不合理な支給基準は変えないが、6疾患として同意書が発行されれば、その支給基準を満たしているものとして療養費を支給してもよいという通知の内容です。健康保険制度からの鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師を排除する立場にはなんら変化はないが、6疾患として同意書があれば、保険者が特別な場合と認めて療養費を支給するというのである。

裁判取り下げの経過に問題はありますが、この通知は、患者と鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師が協力して裁判で国とあらそい導きだした通知です。

医療先行「医療機関の診療の期間が不足している」というような事を問題にして、不支給がたくさん出されていた1997年当時、不支給を防止して健康保険による鍼灸マッサージ治療を普及するうえでは貴重な通知でした。6疾患として同意書が発行されれば療養費を支給してさしつかえないという通知は、それまでの古い通知と比較すると、健康保険による鍼灸治療の普及のために画期的な内容をもつ通知でした。

この通知により医師の同意書がある鍼灸治療、マッサージ治療の療養費支給申請の不支給が少なくなり、不合理な制限を受けながらも健康保険による鍼灸マッサージ治療が広がりはじめたのです。

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