鍼灸マッサージ師会の歴史

千葉鍼灸裁判の経過

平成12年1月20日に提訴し同年9月29日に第1回口頭弁論が行われ審議が始まりましたが、審議の中で追及したのは、鍼灸マッサージ師と柔道整復師の療養費支払い方法に差別をする理由です。

原告弁護団より、国が鍼灸マッサージ師と柔道整復師の療養費支払い方法に差別を設ける理由を明確にするよう再三求め、また、裁判所も国が見解を明らかにするよう要求しました。
この求めに対する文書が、2001年1月25日に行われた第3回の口頭弁論において提出されました。国から提出された準備書面による柔道整復師と鍼灸マッサージ師を療養費支給の条件に違いをつける理由は以下の通りです。

  1. 柔道整復師の治療は外傷性であること。
  2. 整形外科が不足した時代に、外科医の代替的役割を果たした。
  3. 平成7年9月8日に医療保険審議会が、療養費支給についての行政のやり方を肯定している。

この国の見解にたいして原告弁護団から、これらの意見は療養費として支給するかどうか検討する、いわば実態的要件を述べているものである。この問題でも異論はあるが、裁判で問題にしているのは、療養費支給要件がすでに備わっている場合、療養費として支給することが問題ない場合における鍼灸師マッサージの「請求手続き」の差別的な扱いである。

療養費の支給が決められている場合に、なぜ請求手続きの問題で柔道整復師と鍼灸マッサージ師に差を設ける理由があるのかについてはなんら答えていない。療養費支給の要件が満たされているのに、なぜ請求手続きで鍼灸師マッサージ師を差別的扱うのか理由を明確にせよとの原告弁護団の追及に回答はありませんでした。

平成14年11月15日の第12回口頭弁論では、平成15年2月4日に証人尋問を行い結審とすることを確認しました。しかし平成15年の1月23日に千葉地裁書記官を通じて、裁判所の都合により11月15日の口頭弁論で決めた証人尋問の日程を、ゴールデンウイーク、連休明けに変更したいとの連絡が原告弁護団に入りました。

この事態は、裁判長が4月の人事異動の前に判決を出す決意ができず、判決を放棄した逃亡も同然との原告弁護団の見解も聞かれました。国の意向に沿った判決を書くには疑問を持つたが、国の意向に反する判決も書けず放棄したようです。

平成15年6月24日裁判が再開されました。しかし審議を担当してきた裁判官3人が、転勤や退任などですべて入れ替わるという状況で、いったい正しい審議ができるのかという強い疑念がもたれた裁判となりました。

千葉鍼灸裁判の判決 

3人の裁判官がすべて入れ替わり、平成16年1月16日千葉鍼灸裁判の判決が出されました。

千葉地裁民事代3部判決 裁判官 山口 博 武田美和子 向井邦生 判決は原告請求を棄却しました。判決文から抜粋すると裁判官の判断の要旨は次のような内容です。

「本件取扱(柔道整復師に対する療養費の受領委任払い)は、かって合理性を有していたとしても、その後、整形外科医が増加していることなどがうかがわれる現在、果たしてその合理性があるかについては疑義がないではない。」

「しかしながら、上記のとおり受領委任払いは特例的処置であるから拡大しない方向で実施ないし運用するのが相当である上、柔道整復師については、正当な理由があって受領委任が認めら
れ、それが長年にわたって継続されてきたという事実があり、限定的とはいえ医師の代替的機能を果たしていること等を考慮すると、合理性がないとまではいえない。」

「本件取扱(保発4号)は、合理性がないとまではいえないないから、憲法14条の平等原則に違反するとはいえない。」

「柔道整復師のように、従来から受領委任払いが認められてきたという沿革のないあん摩マッサ-ジ指圧師等について、新たに受領委任を認めることは、困難であると厚生労働省の担当者が判断したとしても理由がないとはいえない。

すると、本件取扱いが著しく合理性を欠き、被告国の裁量権を濫用、逸脱するものとはいえない。」

以上の判決文の抜粋から解るように、現在の柔道整復師に対する療養費の受領委任払いは疑問はあるが、合理性がないとまではいえない。また、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師に委任払いを認められないという厚生労働省の判断も理由がないとはいえない、という判決です。言い訳をしながら厚生労働省のやり方を認めています。とても憲法の視点から国民の権利をまもる裁判所の判決とは思えない内容です。

戦前憲法の下においてすら、被保険者が治療を受ける機会を確保するために、健康保険法上特例的処置をとって柔道整復師に対する療養費の受領委任払いを認めているのです。国民の主権、個人の尊重が明記された戦後の憲法の下で、鍼灸マッサ-ジ治療を受ける被保険者の治療の機会を確保する、患者が治療を選択する権利を尊重する立場から、鍼灸マッサ-ジの療養費の受領委任が認められ当然ではないでしょうか。

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